現在建設中の中国・三峡ダムが完成することによって移住させられる113万人の多くは農民。そのひとり、気概あふれる稟愛（びんあい）の７年間にカメラが寄り添う。

移住を推し進めようとする役人と渡り合う時に見せる激しさと対照的に、時に土を耕しながら時にろうそくの火に灯されながら語る不安、そして家族や結婚について話す時に見せる弱さ。 稟愛の心の機微を監督は粘り強く見つめ、素顔を引き出し、そこに残ろうと彼女を駆り立てる土地に対する愛着を描く。

主人公の稟愛は中国農村部に住む貧しい農民、 夫は足が弱く、力仕事は稟愛が担っている。 毎日毎日荷物を担ぎ、山の斜面の畑を耕す。 でも現金収入は少ない。

こどものためにがんばるが、学歴もなく都会で暮らすこともできない。 夫婦ができるのは農業だけ。 今の土地を離れたくない！ 「土地があれば食べ物を生み、お金をもたらしてくれる。」 そう語り黙々と働き続ける。

役人が提示する代替地はどこもひどい。 直感的に自分たちが不利になること拒み、抵抗をしながら交渉を続ける。 その粘り強さには勢いと真剣さがみられる。

しかし、学歴があり、口がうまく権力のある役人に徐々に追詰められる。

稟愛の生き抜く力、魂の響きを感じるドキュメントである。

2007年／制作／監督：フォン・イエン／中国／114分／字幕：日本語・英語

日本語版企画・製作・著作：大阪府／財団法人大阪府男女共同参画推進財団
１１４分　ＤＶＤ